いげ日記

外出の記録その他

10/2 稚内②

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前回のつづき。

残したスラッピージョーをホテルに置いたあと、散歩にでかけた。

稚内といえば「稚内港北防波堤ドーム」である。中学生の時に行った「うつくしま未来博」という博覧会で稚内の観光案内をたくさんもらい、そこに載っていた北防波堤ドームの写真が気に入ったので毎日眺めてすごした。今も実家の本棚に大切にとってある。

そしてその観光案内を眺めるときはいつも、BGMが矢井田瞳のアルバム「Candlize」(妹の持ち物)で、季節は冬だった。だから私の稚内のイメージには矢井田瞳と寒さが必ずついてくる。矢井田瞳のアルバムはiPhoneに入れてきたし、日が落ちてきて昼間に比べ気温もだいぶ下がったようだ。ついに中学時代の地味な習慣を実物で再現できる。

北防波堤ドームにはホテルを出て3分ほどで到着した。ホテルの窓からもその半身が見えていたが、近くで見ると想像通りのでかさだった。観光案内で見たのと同じようにツーリング客も少しいる。ドームの中はからっぽだったが、なにかの小さな団体が小さなテントを張ってなにかを焼いて食べていたり(閉めきっていて中は見えない)、小型犬を連れたおじさんが散歩をしていたりした。

もう少し暗くなってからまた見に来たいので、とりあえず北防波堤ドームの西側に連なる遊歩道「しおさいプロムナード」を歩いた。ここも例の観光案内で存在を知り、十数年来ずっと憧れだった場所である。階段を上って遊歩道の上に出ると、テトラポッドのあっち側が見える。空がいい具合の色だったので身を乗り出して写真を撮りたかったが、携帯を海に落とすのがこわくてやめた。景色のよい普通の遊歩道であった。

そのまま稚内駅へ向かい、フリーパスを購入した。7日間有効、指定席も6回まで利用できて26,230円。道の駅や映画館も兼ねた珍しい駅舎で、北海道ならではの「セイコーマート」も入居している。

駅の西側にはスーパーがあった。スーパーの反対側へ回ってみると商店街になっていた。きれいなほどに人っ子ひとりいない通りで、赤い羽根募金を呼びかける人たち(しかも5人くらいいる)の声がむなしく響いた。

来た道を戻るつもりで歩いていると、駅から港に向かって開けている広場のようなスペースを見つけた。ベンチがたくさん設置されているのでそのうちの一つに座り、少し移動してはまた座り、そうして時間をつぶしながらだんだんと海に近寄った。暗くなるにはまだ時間がありそうだったので、海に面したベンチで綾鷹を飲んでいたら急にビビっときた。

写真では見たことがない景色だったのだが、かつて観光案内で見た稚内のイメージとバッチリ同じ感じがしたのである。それで思い出したようにイヤホンを取り出して矢井田瞳をかけた。寒くなってきたので条件がそろった。「稚内の感じだなあ」と思った。この感じは自分だけの独特の感じなので説明しようがないが、べつに誰かに共感してほしいとも思わない。毎日同じ冊子ばかり眺めながら「いつか一人で稚内に行ってこの感じ味わいたいなあ」と思っていた中学生の私の夢が叶った瞬間であった。地味すぎる。

 

 

 

なんだかそれで満足してしまったのでそのままホテルに戻り、完全に暗くなってから改めて外に出た。明かりが灯った北防波堤ドームを見学したあと、夕飯を買いに先ほどのスーパーへ行ってみることにした。昼食が遅かったうえに多かったので、外で食べるほどお腹は減っていなかった。

驚いたのはその道中で鹿を間近に見たことだ。泊まるホテルの隣に市民プールのような施設があったのだが、その敷地の芝生で普通に草を食べていた。暗かったので、初めは代々木公園に散歩に来ているような背が高く細身なタイプのイヌかと思ったのだが、ツノが生えていたので腰が抜けるかと思った。人間が近寄っても大丈夫な生き物なのかどうかすら知らない。遠巻きに写真を撮って立ち去った。

セロリの漬物としじみスープを買って帰ると、鹿はもう同じ場所にはいなかった。元気でいてほしい。

同じところばかりぐるぐる歩いた1日であった。翌日のフェリーに遅刻しないよう早く寝た。